これからの世界のために 「もし、またアーリグリフとシーハーツが戦争を始めたら、お前はどうする?」 青空の下。川縁の野原に一組の男女。 女は男の台詞を聞いて目を見開いた。しかしそれは一瞬のことで、持ち前の冷静さをもって、彼女は逆に男に問いかける。 「それは、そちらの国でそういう動きが起こっている、ということですか?」 彼女――クレア・ラーズバード――が、隠密であり、『クリムゾンブレイド』であることを嫌でも思い出させる、細められた真剣な目に見つめられる。だがしかし男は――アルベル・ノックス――は、それに少しも動じることなく答えた。 「勘違いするな。そういうワケじゃねェよ。ただ、聞いておこうと思っただけだ」 「私は、戦います」 迷いもなくクレアは答えた。 「……何故、だ?」 「私の命はシーハーツのもの。シーハーツが再び戦いの道を往くのなら、私もそれに従うまでです」 「例え相手が俺でもか?」 からかうようで、でも目は真剣に、問い掛けるアルベル。 「貴方が相手なら尚更です。『シーハーツ軍総司令官』が幾千の兵士を率いたところで、貴方に勝てるとは限らないのですから」 「……ハッ。あの戦争の最中、何度となくアーリグリフ軍を撃退させた張本人がよく言うぜ」 「本当のことですよ。フェイトさん達との戦いを終えてこられた貴方には、到底勝てる気がしません。 でも、『もし』また戦争が起こるならば、いずれはぶつかることになるでしょうね」 以前の戦争では、お互いに直接ぶつかることは一度もなかった。運の良かったことだ、とクレアは心中で思う。 「フン。……もしそうなったときは、俺以外の奴に殺されるなよ。俺が好敵手と認めてやってるんだからな」 「フフ…。貴方も、寝首をかかれないようお気をつけて」 一度親しくなったからといって、真剣勝負に情はかけない。それは彼らの戦士としての誇り。 ふと、クレアが立ち上がる。アルベルがそれを目で追うと、彼女の顔は逆光に翳って見えた。 「でもね、アルベルさん」 クレアの表情は見えない。しかしきっと微笑んでいるだろう、穏やかな声。 「『もし』なんてことは起こらないんです」 「……は?」 「あんな悲しいことは、二度と起こらないようにしなくてはいけません。少なくとも、私の目が黒いうちは、シーハーツにそんなことはさせません、絶対に。……それは貴方も同じでしょう?アルベルさん」 アルベルはその言葉にやや目を丸くすると、やがて滅多に見せない穏やかな顔を見せて、言った。 「フン。面倒くさそうなことこの上ねぇが。やるしか無ェんだろうな、俺も……テメェも」 それは二人の暗黙の約束。 大切な故郷と、大切な人、両方を守るための。 いざとなったら1番大切なものは「国」で、そのためには殺し合いも厭わない。お互いに好敵手だと認め合っているから、手加減もしない。 でも、戦争なんてものはないのが良いに決まってる。だからそのためには協力しよう、みたいな。 勝手な妄想ですが、立場が似通ってる二人は考えることも近いのではないかなあとか。 |